2007年12月
『 ファミリーコンステレーション / 〜無意識に働く「存在」の力〜 』
・・・畦 昌彦 先生
皆さん、こんにちわ。今回の PBI上質人生大学公開講座レポートは、昨今急速に注目を集めつつあるセラピーのひとつであり、また上質人生大学講座として数多くの再講座へのリクエストを頂いている 畦先生の 「 ファミリーコンステレーション〜無意識に働く「存在」の力〜 」 をご案内いたします。
 ファミリーコンステレーションとは、ドイツ人セラピストバート・ヘリンガーによって始められた家族システムそのものを扱うセラピーです。
このセラピーでは、クライアント(依頼者)の問題をその人だけの問題として見るのではなく、クライアントの家族までをも一つのシステムとしてとらえる体系的な家族療法で、具体的には 「病気・精神疾患・人間関係のトラブルなど個人に起きる様々な問題の根底には家族全体、または家系のシステムのなかに生じた問題=『排除された存在』がある」 と考えるのです。
例えば、ある家庭の子供が喘息などの発作を持っており、両親が喧嘩を始めると決まってその発作が起こるケースがあるとします。子供に発作が起これば、当然両親はその子に付きっ切りになります。この場合、ファミリーコンステレーション では原因を本人の問題としてではなく、家族全体の関係性で捉えます。つまり、この発作を家族という一つの身体に現れたひとつの症状とみなし、その局所的な症状を治すのではなく、身体全体に対して働きかけてゆくのです。
実際のワークでは、クライアントとその家族関係者にあたる代理者を同じフィールドに並べ、そこでおこる各々の現象から人間関係のもつれを読み取ります。そして、万一そのもつれが親から子へと代々引き継がれているような場合には、世代を超えた大きな枠組みとして各々の魂が関わるもつれを解きほぐし、クライアントが精神的症状、病気、家系的に受け継がれる問題などを乗り越えて生きることができるように、と手助けをするのです
私達は、この世に生まれた瞬間から家族に所属します。排除された存在はワークの中でメンバーとしての本来の位置に戻され、所属する権利を回復します。そのことによって混乱した家族システムは秩序ある家族システムへと変換されていきます。そのことによって個人の抱えているさまざまな問題が解消されたり、生活環境が劇的に変化してしまうということが起こり得るのです。
さらにこの方法は家族だけではなくさまざまな組織にも応用することができるので、企業経営におけるビジネスコンステレーションという形での活用も試みられております。
いまや心理療法を超えて、企業経営、組織管理という分野をもその対象としながら進化し続けている大注目のアプローチ法といえるでしょう。

【畦 昌彦(うね まさひこ) 先生】
1961年大阪生まれ。18歳で僧侶の道を志し、一般の家庭より出家。仏教大学を卒業後、浄土宗僧侶となる。26歳で滋賀県甲賀市法蔵院に住職し現在に至る。住職就任後、さまざまな人間の苦悩、問題に向き合う必要性を感じ、修験道、運命学、カウンセリングなどのさまざまなセラピーを学び、これらを通して多くの人々にかかわる。
現在は浄土宗大本山清浄華院の法務部長として本山の運営にもかかわり、平成17年より同本山において、浄土宗の僧侶を対象にNLP・ファミリーコンステレーションを中心にしたカウンセリングの研修会を開催している。

「みなさん、はじめまして。私が 畦と申します。宜しくお願い致します 」 畦先生が会場の参加者に挨拶をされました。
「みなさんは ファミリーコンステレーションをご存知でしょうか。このセラピーは頭で理解しようとしても、そのメカニズムはなかなか把握しきれない、やや特殊な性質のものですが、現在のドイツでは非常にオーソドックスなセラピーとして認知されています。創始者である ドイツ人セラピスト:バート・ヘリンガーは宣教師からセラピストに転向された人物で、カウンセリングを受けても一定水準以降はクライアントの改善が図れない多数のケースから 「問題は個人だけではなく、クライアントの所属する環境(先祖まで含む繋がり=家族=システム)に帰依するのではないか」 と考え、その気付きによって家族システムそのものを扱うセラピーを考案したといわれているものです」
「ひとつの例を挙げましょう。人は傷の中で生きているものですが、例えばあることが原因で産まれ出ることなく亡くなった姉がいたとします。その際、両親には責任はなくとも、無意識とも呼べる深層心理の域ではへリンガーの言葉でいうところの “家族システムから排除された” ことになるのです。
そして、次に産まれ出た者がその空いた席に入ろうとします。これはあくまでもシステムレベルでの罪悪感により、その穴を埋めようとする本能的な行為なのです。そうすることによって家族としてのシステムの中で愛を分かち合い、忠誠を尽くしてその任務を全うしようとするのです。
つまり、自分自身が知っている、亡くなった個人、もしくは行方不明になった誰か、あるいは自分のおじいさんやおばあさんが持っていた悲しみや苦しみ、恐れといったものと同一化、もしくは一体化してしまったがゆえに、その感情の全てを自分のものにしてしまうのです。 その結果、何故だかわからないが、フト死にたいような気になったり、あるいはどうしても抑えられない衝動に駆られ、理屈ではしてはいけないとわかっているような行動をどうしてもやめられない、といった現象が起きてしまうのですが、こういった症状の場合、いくら心理療法を受けてもなかなか改善が見込めないといったケースが少なくありません。
これらの症状は、例えれば化膿した怪我のようなもの、とでも言える類のものです。つまり、化膿した怪我は膿を出し切れれば回復に向かうのですが、怪我の深い箇所に芯のようなものが残ってしまった場合、一見、直ったかに見えた外観も、少し時間が立つと同じ箇所に同じ症状が出てしまいますよね。実は、これと同じようなことが人間の心の中にも起きている、といえばお分かりいただけるでしょうか」
「ファミリーコンステレーションを行った場合、セッションを受けた本人(クライアント)が気付き、生まれ変わることはもちろんのことですが、直接セッションを受けていないはずのクライアントに関連する人々(家族やパートナー、所属している組織など)にも同時に変化が起きてしまうことを、私は度々目撃しております。
これはシステムの構造、言い換えれば大地そのものが揺れ動き、その上に立つ建造物全てに影響が及ぶような状況を意味します。つまり、人は一人で生きているわけではない、というコトであり、目に見える表面的な現象はもとより、目に見えないような深い箇所でこそ人は他人と繋がっている、という普遍的な事実をシステムは語っているのです。
もっとも、前もって心の準備ができていなければこのような変化が起きた際、今まで築き上げてきた “こうあるべきだ” “こうあらねばならない” といったその人なりの心理的概念が使えなくなる可能性が発生します。
人間の基本的心理として “(現状から)変化したくない” “手放したくない” といった心の傾向がありますので、こういった変化に対してどうしても抵抗したくなるのですが、すでに土台が変わってしまっているので止めようもなく、混乱を伴うケースも少なくありません」
「このような自分自身に起こった変化を “これはきっと、幼児期のあの体験が元になっているに違いない” と考えるのはごく自然な反応ですが、こういった推測は大概外れているものです。
この場合、問題の根底にあるものは、本人にはわからない類のものであるケースがほとんどですし、もちろんファシリテーター (セラピーを仕切る役目)である、私どもにも一切わかり得ないことだもといえるのです 」
「セッションとしてのファミリーコンステレーションで起こる全てのことは予測不可能のことであり、その最中に紡ぎ出される現象は、常に変化していきます。赤の他人であり、クライアントの事情をまったく知り得ない代理人がフィールドで感じる感覚、感情こそが、クライアントが抱える深い心の問題を解決へと導いてくれる鍵なのです。
不思議な話ですが、これが真実であります」 以上のようにファミリーコンステレーションについての説明をされた畦先生は、「今回は、特に家族の問題を取り上げてみたいと思います」 と話されて、講座内で希望者を募り、実際のセッションを行うに至りました。

ここで、ファミリーコンステレーションをご理解いただく上でセラピーの流れを 簡潔に述べさせていただきます。 @ クライアントがご自身の問題を述べる
A ファシリテーター (セラピーを仕切る役目)が、 クライアントを含む問題に関わる全ての該当者の代理人を参加者の中から随時指名する
B 代理人として指名された第 3者は ファシリテーターが指示する場所に立ち、そこで何を感じるかを見極める
C ファシリテーターは代理人に何を感じているかを聞き出し、そのことについてクライアントに感想を訊ねる。その際、必要に応じてクライアントの感想に関係する他の代理人との位置関係を調整し、再度クライアントに感想を訊ねる
D クライアントが問題解決に必要な何かに気付くまでCを繰り返す
以上が ファミリーコンステレーションの大まかな流れになるのですが、不思議に思えることは全ての代理人はクライアントのプライベートな事柄を何一つ知らないにもかかわらず、あたかも精密機械における歯車のように、それぞれが呼応して自然と有機的に動き出してしまうという点です。もちろんこういった些細な情報を丹念に拾い集めるには、深い洞察力と高い技術が求められます。
こういった点についての心構えを畦先生は、「私たちファシリテーターは、このような個人のデリケートな情報を扱うことに関して細心の注意を払っておられますし、また、クライアントが信頼するに足るファシリテーターでなければならないという、意識の高さは常に持ち合わせるように心がけております」と、述べておられました。
今回のレポートでは、特に家族間の問題ということもあり非常にデリケートな事象を含みますので詳細は述べず、実際のセッションで発せられた、クライアントや代理人の感想やセリフ、そしてフィールドでの代理人とファシリテーターのやり取りの一端をご紹介したいと思います。皆様にはそこで生み出されるライブ感を少しでも感じ取っていただければ幸いかと存じます。

ある傾向から抜け出すことのないどちらかの両親の役を担う代理人に立ち位置の感想を求めるファシリテーター。
ファシリテーター:「この立ち位置はどうですか」
代理人:「何も感じません」
ファシリテーターは次いで、ある症状を伴うどちらかの両親の役を担う代理人に立ち位置の感想を求めます。
ファシリテーター:「この立ち位置で何か感じますか」
代理人:「悲しくなり、○の方向を向くことができません」
ファシリテーター:「ではこれではどうでしょう。いいですか、悪いですか」
代理人:「…」
言葉を発することができず、感極まり思わず涙をこぼす代理人。
ここでファシリテーターはクライアント自身だけでなく、ご両親の両家系に何か問題や心当たりはないかと詳細に聞き出します。
あらためて問われても最初はなかなか記憶のドアを開けることのできないクライアントも、徐々に小さな事象を思い出してゆきます。その拾い出されたひとつひとつの断片の重要性を見極め、ファシリテーターは必要な事柄だけを選択し、システムの中に投じてゆきます。
そうすることにより両親役だけではなく、必要な役数だけ投入された各代理人達が、それぞれ思いもよらない反応と行動を取り始めます。
ある者は泣き出し、崩れ落ち、ある者は震えを伴います。またその場に何の反応も見せない代理人も表れます。そのそれぞれの反応に、もつれた紐のごとく隠された秘密が眠っているのです。
またセリフのやり取りとは関係なく、指定された位置に立っているだけの代理人がイレギュラーに発する一言も存在します。これも家族システムの過去に存在していたであろう関係性を、更に深いレベルで解明する情報としてファシリテーターは見逃さず、各代理人にアプローチを試みて行くのです。
このようにファシリテーターはシステムを総合的な目線でみつめ、時々の状況で各代理人の発する 「腹が立ちました」 「違和感はありません」 などといった様々な感想を丹念に拾い集め、セッションを問題解決点へと粘り強く導いて行くのです。
もちろん、問題解決の最終点までセッションを突き詰めることもあれば、総合的に考えて「ここで一応終わっておいた方が良さそうだ」と判断する場合もあり、セッションの終わり方はケース・バイ・ケースであります。しかし、その終着点には必ずクライアント自身が内面で感じる “気付き” が内包され、それを拠点に渾沌とした家族システムに希望の光が見出され、クライアントは変化してゆけるのです。

ところで今回のセッションの終了において、畝先生はファシリテーターとしてクライアントに次のような興味深い言葉を投げかけておられました。
畦先生:「両親に○○になって欲しい、といったクライアント以外の人間を変化させる目的にファミリーコンステレーションを使うことはできません。本当に必要なことはあなた自身がどうなりたいか、の一点なのです。
あらためてお聞きします。あなたは今回のような心配が一切なくなった場合、何をしたいのですか?」
クライアント:「・・・・・・・」
畦先生:「あなたがどうなりたいかによって、このワークの持つ意味が違ってきます。目的が不明確ですと、得られる結果も不明確なものしか訪れてくれません。
あなたは今までの状況から察するに、社会人として、そしてひとりの成人として心が折れることなく本当によくやってきたと私は思います。しかし、その立派さがあなた自身を責め立てているような感覚の一端になっているのかもしれませんね。
ですから今回のワークで得られた意味を何度でも思い出し、本当に新しい発想はないのか、そしてあなたが存在すべき家族システムは本来どのようなものであるのか、ということをご自身に問いかけてみてください」

最後に畦の先生は次のようにおっしゃいました。 「 ファミリーコンステレーションでは、クライアントから事前に情報をもらうことはありませんが、赤の他人であるはずの代理人がもたらしてくれる ”何か“ がきっかけとなり色々なことがわかってきます。この不思議な感覚は、実際に代理人を体験してこそ理解できる類のものだと思います。
システムの中では、常に家族のメンバーは平等に席を与えられています。しかし、亡くなった子供がいた場合、往々にしてその席には次の子供が座ろうとし始めます。この現象を我々は同一化と呼んでおり、理屈や他のセラピーではどうにもならない現象として捕らえておりますが、この問題の解決法としてシステム上の本来の席に戻してあげることが大変重要なのです。そういった意味で、本人(クライアント)が家族に受け入れられる、もしくは家族を受け入れることができたなら、必ず何かが変化し始めますし、実はその一点にこそ問題解決の糸口が存在するのです。
ポイントは順序のもつれです。システムとしての順序が持つエネルギーの流れの良し悪しが、まずは基本となります。命のエネルギーの流れが滞ると、そこに悪い感覚が発生し、様々な問題を生み出していきます。代理人がフト漏らす何気ない言葉にこそ、システムのもつれを生み出した原因が隠されている場合が多いのです。
決して忘れないでください。自身が所属する家族システムのどこに己のポジションがあるのか、そして自分自身がそのシステムからどのような影響を受けているのか。普段はなかなか意識することのない概念ですが、自分自身ではどうしても超えられえない問題や壁の根本がそのシステムの中に隠されているかもしれないということを…」

回を追うごとに問題解明へのアプローチレベルが深みを増してゆく、畝先生のファミリーコンステレーション。
ご好評につき、リクエストも多数頂戴しておりますので、ホロンPBIではファミリーコンステレーションを 「上質人生大学公開講座」 においてシリーズ化といった形で、展開させていただくことに決定致しました。
皆様方には、その都度お知らせさせていただきますので、どうぞ宜しくお願い致します。
ホロンPBIでは忙しい毎日の中では中々感じることの出来ないような「感動」や「体験」を皆様に味わっていただけるよう、各界のさまざまな先生のお話をホロンPBI主催の「上質人生大学公開講座」を中心に今後も充実したラインナップで展開してゆきたいと考えております。
気軽な雰囲気の中で本当に気持ちの良い「体験」や「知識」に触れ合うチャンスなんてそうそうあるものではないですよね。これを機会に好奇心一杯の気持ちを鞄に詰めて、会場まで足をお運び頂ければ幸いと存じます。
スタッフ一同、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
それでは次回のホロンPBI主催の「上質人生大学公開講座」を楽しみにしていて下さいね。楽しいこと、不思議なこと、そしてあなたの人生にちょっとしたエッセンスを加えることが出来ること請け合いです。 どうぞご期待下さい。

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