上質人生大学

特別講座レポート

2008年10月
トークライブ in 関西~身体を割る・時間を割る
成瀬 雅春 (なるせ まさはる)先生 内田 樹(うちだ たつる)先生

 今回の上質人生大学公開講座は 「 成瀬雅春先生トークライブ in 関西~身体を割る・時間を割る 」 です。

 

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【 成瀬 雅春 (なるせ まさはる) 先生 
  
ヨーガ行者、ヨーガ指導者。 1976年からヨーガ指導を始め、1977年2月の初渡印以来、インド、チベット、モンゴル、ブータンなどを数10回訪れている。
  地上 1メートルを超える空中浮揚やシャクティチャーラニー・ムドラー(クンダリニー覚醒技法)や心臓の鼓動を止める呼吸法、ルンゴム(空中歩行)、系観瞑想法などを独学で体得している。
  2001年、全インド密教協会からヨーギーラージ(ヨーガ行者の王)の称号を授与される。アーカーシャ・ギリ(虚空行者)という修行名で毎年標高4000mのヒマラヤで修行を続けている。成瀬ヨーガグループ主宰。倍音声明協会会長。朝日カルチャーセンター講師。

 

 

 

 

 

【 主要著書 】
『リフレッシュ・ヨーガ』
『ピュア・ヨーガ』 (以上日本文芸社)
『シャンバラからの伝言』
『キレイをつくるらくちんヨーガ』(以上、中央アート出版社)
『ハタ・ヨーガ』
『呼吸法の極意 ゆっくり吐くこと』
『クンダリニー・ヨーガ』 (以上、BABジャパン)
『よく分かるヨーガ』 (グリーンキャット)
『 5分でできるスッキリ瞑想法』(日本実業出版社)
『禁煙ヨーガ呼吸』(ゴマブックス)

【 主要ビデオ&DVD 】
『ハタ・ヨーガエクササイズ』
『ハタ・ヨーガアドバンス』
『ヨーガ呼吸法上巻・下巻』 (以上、BABジャパン)
ビデオ『気持ち良くタバコがやめられる』
DVD『ヒマラヤ修行』(以上、キュアー)など。

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内田 樹 (うちだ たつる)先生
 1950年東京生まれ。東京大学仏文科卒。東京都立大学人文科学研究科博士課程中退。東京都立大学人文学部助手を経て、1990年より神戸女学院大学文学部 助教授 。 96年より現職 。
 専門はフランス現代思想、武道論、映画論、 教育論 。 
 多田宏師範に就いて1975年から合気道を学ぶ。多田塾甲南合気会師範、神戸女学院大学合気道部師範、合気道六段。

 

 

 

【 主要著書 】
『ためらいの倫理学』(角川文庫)
『寝ながら学べる構造主義』(文春新書)
『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書、第六回小林秀雄賞)
『レヴィナスと愛の現象学』(せりか書房)
『他者と死者』(海鳥社)、『映画の構造分析』(晶文社)
『私の身体は頭がいい』(文春文庫)
『村上春樹にご用心』(アルテス・パブリッシング)
『街場の教育論』(ミシマ社)
『昭和のエートス』(バジリコ) ほか。

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 「みなさん、こんにちは」  会場の皆さんに挨拶をされた成瀬先生と内田先生。
 「さて、何から話しましょうか(笑)」 成瀬先生の一言に、会場も和みます。


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成瀬先生
「身体の調子が落ちた時、熱を出すと気持ちいいですよね」

内田先生「そうですね。身体にいいし気持ちもよくなる感じがしますよね。先生は熱を出すのはお好きですか(笑)」

成瀬先生「大好きですね。でもある程度、歳を重ねてくるとなかなか 40度を越えるような熱が出なくなってくる。それが悲しいんですよ(笑)」

内田先生「私が最後に 40度の熱を出したのが93年の3月なので、もう15年も前のことになりますね」

成瀬先生「ハハハ、それはよく覚えていますね。 私は何年前であったかは覚えていませんが、若い頃に 41度ぐらいの熱が出て 「あぁ~しんどいな」 と思いながら仕事をして、その後、病院に行ったら 「あなた、急性肺炎の治りかけですよ」 なんて言われ 「なんで、もっと早く来なかったのですか!」 と怒られた記憶があります(笑)。高熱が身体を治してくれたのですね。
  
でも、高熱ってホント気持ちがいいのですよ。この気持ちよさは深い瞑想状態に通ずるものがあると思いますね」

内田先生「本当ですか!?」

成瀬先生「えぇ。あの、ファ~ってなる感じがたまりませんよ。そういう意味でも、ときどき風邪をひくのは面白いことですよね(笑)」

 

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内田先生「 1週間ぐらい風邪を引き続けて仕事に行くのがイヤになっちゃったりして…」

 

成瀬先生「それって、さぼり病じゃないの?(笑)」

内田先生「違いますよー!(笑) でも、家に帰って横になったらグーッと熱があがり、その後、汗をかいたらスーッと熱が下がって、あとはスッキリ。 実に自然なサイクルだと感じますね」

成瀬先生「それって自然な浄化作用ですから、とってもキレイになりますよね」

 

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成瀬先生「毎年、ヒマラヤの 4000メートルの高地に修行に行くのですが、その付近になると酸素が薄いので、只、そこに居るだけで体力を使うのです」

 

内田先生「高地に行く際は、どのようなことに気をつけていらっしゃいますか」

成瀬先生「私はあまり水分を取りませんが、他の人は高山病を軽減させるためになるべく水分を補給するようにしていますね。水分を多目に取ると高山病にかかりにくいのですよ」

内田先生「高山病とはどのような症状が出るものなのでしょうか」

成瀬先生「一般的には頭痛とされていますが、意味もなく笑い出す、というのもあります。これは脳が酸欠になるからだと思われますね」

 

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内田先生「毎年、そのような高地に出向かれるというのは大変なことですね」

 

成瀬先生「別に大変なことじゃありませんよ(笑)。 それよりも、歩けるということが人間にとってとても大切なことなのです。人間、幾つになろうとも歩けるうちは大丈夫ですよ。でも、歩けなくなるととたんに生命力が落ちてくる。だから歩けるうちはヒマラヤに登るなんて大変なことじゃないのです。それに外を歩くということは、雑踏から情報を得られるということですから、普段の生活でも歩くということはとても有意義なことなのですね」


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内田先生「私はバイクに乗りますが、成瀬先生はバイクとかお好きですか?」

 

成瀬先生「僕も昔、バイクに乗っていましたが、都電のレールの上で滑って転んだことがあってそれから乗らなくなりましたね」

内田先生「バイクを運転して コーナーを回る時って、釣竿のリールが糸を巻き込むような感じがするのです」

成瀬先生「というのは?」

内田先生 「コーナリングのときは、コーナーを抜け出した自分をはっきりイメージして、もう曲がり終えた自分に吸い込まれるように身体を使うので、時間を少しフライングする。未来についての下絵を描かないままで、リアルタイムでコーナーに突っ込むと、身体が無用に緊張して、運動精度が下がるから、危険なのです。すべてが終った時点の自分を“今の自分”だと考え、今の自分を“過去の自分”だと考える」

成瀬先生「それはヨガの世界でいう “死” の世界の概念に近いですね。死に近づくのは怖いものですが、それは現在から死に向かうから怖いのであって、死んだ状態に自分がいて、そこから現在に戻ってくれば全く怖くはありません。これは死をコントロールする概念に基づくものであります」

内田先生 「同じように時間をコントロールするという話しをK- 1格闘家の武蔵さんから伺ったことがあります。リアルファイトですから、体感を極限まで敏感にしないと精度の高い動きはできない。でも、身体感度が上がれば、当然痛覚も上がる。敏感になった身体に受けるダメージをどうやって処理しているか、それが知りたかったので、お会いしてすぐに訊いたんです。
  武蔵さんの答えは“相手をクリーンヒットし終えた2つ先のパンチを打っている自分”を今の自分だと思う、ということでした。たしかに今相手からパンチを受けた。だから、どこにどういうダメージがあるかはよくわかっている。けれども、それはコンマ何秒かであれ、すでに過去のダメージであるから、“それほど痛くない”。これは未来から現在を見て、時間をずらす技法の適例だと思います」

成瀬先生「目で見てから避けるのでは遅いですしね」

内田先生 「見るは理解すると直結していますから、“見てから反応する” ではなく、現場で処理する “感じる” が大切だと思います」

 

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内田先生 「知り合いのフランス人が阪神大震災に遭遇したことがあります。フランスは地震というもののない国ですから、彼は今までに地震というものを体験したことがなかった。だから地震のときには何が起きたかまったくわからなかった。彼のいたアパートが燃え出して、中から髪の毛をふりみだした老婆が転がり出てきたのを見たとき、彼はその風景を既知の何かと結びつけて“理解”しようとした。彼が思いついた説明は一つだけで、それは“最後の審判”の日が来て、地が割れて、硫黄の火が噴き出し、死者たちが甦ったというものでした。その瞬間、すさまじいパニックに襲われて、そのあとのことは記憶にないそうです。

 

  この例からも判るように、自分の理解を超えたものを理解しようとするのは、いいことばかりじゃないのです。理解したせいで状況への対応能力が低下するということだってある。それなら、理解することは生き延びる上では役に立たないということになります。それよりは『何だかわからないこと』はわからないままでいた方がいい」

 

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0810_naruuti_07.jpg成瀬先生「身体を細かく割っていくことは、時間を細かく割ることに繋がっていますよね」

内田先生 「合気道の技法的な課題はまさにそれですね。身体を丁寧に扱い、身体の肌理を細かくしてゆけば、時間の肌理も細かくなり、時間も主観的にはゆっくり流れるようになります。そして、主観的には時間がゆっくり流れているとき、実際の動きはきわめて速いのです」

成瀬先生「私たちにはどうしても常識というものがあって、その壁を越えたくないと思ってしまうものです。つまりその壁の向こうが見えるとは思いたくない、だから見えないのです。これは危険を回避し自己保全のために備わった生物的な本能だと思います。しかしその一方で、そういった常識の垣根を取り払うと、今までとは違った五感が働き出す可能性も出てきます。
  
例えば今、私の指先は内田先生の服に触れてはいませんが、自身の感覚を研ぎ澄まして服に触れている感覚を指先に持つことができれば、これはもはや内田先生に触れていることと同じことになります」

内田先生「そうですね。合気道では相手に触れずとも投げ飛ばすことができる。これは素人には理解し難い感覚です。常識では筋肉を働かせて作り出した力によってのみしか相手を投げ飛ばすことはできない、と考えてしまいますが、実は身体を、感覚を細かく細かく研ぎ澄ましていくとそうではないことが見えてくるのです。
  
こういった感覚能力や体内を流れる時間を細かくコントロールする大切さは合気道に限らず弓道でも同じですね。身体にある何千ものチェックポイント全てを細かく完璧にコントロールできれば、それはすでに的を射抜く前から射抜いているということなのです。つまり、射抜くか射抜けないかは、相手のせいではなく、全て自分の責任である、と。そのレベルまで到達すると、相手を射抜くかどうかはもはや問題ではなくなり、どれほど自身の身体や意識をコントロールできるかの問題となってきます。
  
そしてさらに自分のコントロールを超えたコントロールを求められるものに、武道の分野における乗馬があります。これは自身をコントロールした先に、自分でも人間でもない馬をもコントロールし、人馬一体となることが求められるのですから、本当に大変です」

成瀬先生「送受信の極限ですね。常識というものは踏まえなければならないものですが、それを乗り越えないと人間の持っている潜在能力を開花することはできませんね」

内田先生 「言葉では“脳と身体”というふうに二元論的に言われますけれど、本当は脳と身体を区別できるはずがありません。身体が脳にコントロールされると同じように、脳は身体に支配されていますから、実際には二つの領域は混じり合っている」

成瀬先生:「深層意識も、顕在意識も、潜在意識も、無意識もすべては同じ一つのもので、且つコントロールできるものなのです。そのコントロールする大きな鍵が身体を通して行うアプローチで、そのためには細かく丁寧な内面の観察が非常に重要な鍵となるのです。
  
実際に存在するかしないかはさほど重要な問題ではなく、そこにある質感を五感全てで味わいきる。その体験こそが自身の身体や精神、心の理解への扉を開けるということを是非ご理解いただきたいと思います」


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 ホロンPBIでは忙しい毎日の中では中々感じることの出来ないような「感動」や「体験」を皆様に味わっていただけるよう、各界のさまざまな先生のお話をホロンPBI主催の「上質人生大学公開講座」を中心に今後も充実したラインナップで展開してゆきたいと考えております。

 気軽な雰囲気の中で本当に気持ちの良い「体験」や「知識」に触れ合うチャンスなんてそうそうあるものではないですよね。これを機会に好奇心一杯の気持ちを鞄に詰めて、会場まで足をお運び頂ければ幸いと存じます。

 スタッフ一同、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

 それでは次回のホロンPBI主催の「上質人生大学公開講座」を楽しみにしていて下さいね。楽しいこと、不思議なこと、そしてあなたの人生にちょっとしたエッセンスを加えることが出来ること請け合いです。 どうぞご期待下さい。


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【 特別付録 】 

  恒例となりました、成瀬先生の服装ワンポイントチェック!

 今回の講座でも成瀬先生の服装にチェックすべきポイントを発見致しました。

↓ ココ 

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 草木染のような優しい風合いの生地で仕立てた草木模様のシャツに揺れるのは、草色の縁取りを施した小さなハート型ボタン。

 ナチュラルイメージをテーマにした、細やかな心遣いが隅々まで感じられる高等テクニックがお見事デス。

オシャレですね!

 

 

 

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