2006年2月
笑いの実学~元気いっぱい商売繁盛...笑いの不思議...~
井上 宏 先生
商売の町・大阪。大阪には至るところに商売の空気が漂っています。そういった大阪が笑いの文化を発展させてきたのはある意味必然であったでしょう。なぜなら、笑うことは一瞬にして信頼関係を結ぶ効果があり、ビジネス上での重要なファクターとしても活用されるからなのです。 相手の潜在意識レベルとのコミュニケーションを果たすために生み出された数々のコトバ遊びもその一つ。さらに意外なことに、上方文化とその笑いは非言語のコミュニケーションという点にも特長があるのだそうです。
さらに、笑いの不思議パワーは、健康法をはじめ強力なビジネス戦略に至るまで、まさに驚異の威力を発揮します。現在の科学では、笑うことがある種のDNAスイッチをONにし、免疫力をUPさせることが証明され始めています。(ある研究によれば、笑う事によって免疫力に関係する63種類ものDNAスイッチがONになるとか!)
さぁご一緒に、目からウロコのお話をご一緒に伺いましょう。
【井上 宏(いのうえ ひろし) 先 生】
大学卒業後、読売テレビに就職。13年間の現場経験を経て、1973年(昭和48) に関西大学社会学部に転じ、1981年に教授就任。1994年(平成6)に新設学部の総合情報学部に移籍。2003年3月に定年退職し、4月から関西大学名誉教授。
「コミュニケーション論」「情報メディア論」「社会学」を講じながら「笑いの研究」に関心をもち、1994年に「日本笑い学会」を設立。
現在、関西大学名誉教授、日本笑い学会会長、大阪市社会教育委員、(社)生活文化研究所所長・上方研究の会代表などをつとめる。「メディア」「笑い」「大阪」が研究 のキーワードとなる。
【主要著書】
『情報メディアと現代社会』『笑い学のすすめ』『大阪の文化と笑い』など。
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ニコッと笑い 「みなさん。こんにちは」 と会場の皆様に挨拶 をされ 「私は ”笑う角には福来る” の言葉が大好きです」 と述べられた井上先生。まずは笑いについて次のように論じられました。 「料理は食べてみなければその美味しさはわからない。同様に、笑いも笑ってみなければそのよさはわからない」 と。
「山口県は防府市小俣地区に 「笑い講」 というお祭りがありますが、そこでの笑いは豪快です」とおっしゃる井上先生。
「一連の神事の後は直会(なおらい)があり、神酒・神饌や料理をおろして頂きます。ここまでは普通なのですが、その後がすごいのです。とはいっても、その様子を言葉で説明してもなかなか伝わり難いでしょうから、こちらのモニターでニュースの録画ビデオをご覧頂くことに致しましょう」 と説明された井上先生は、会場横に設置されたTVモニターを指差しました。
その画面には神事に携わる複数の男性が映し出されていましたが、ほどなく彼らが大きな声で突然笑い出したのです。そう、文字通り 「大声で、身をよじるようにして笑い始めた」 のです。例え画面の中の出来事とはいえ、唐突に始まった笑いの持つ迫力に会場内もビックリです。
「今、皆さんにご覧頂いた 笑い講 は、800年ほど前から続く、由緒あるお祭りです。このお祭りでは笑いを3回繰り返しますが、それぞれの笑いには意味が込められているのです。1回目の笑いには “今年の豊作を感謝する” の意味が。2回目の笑いには “来年の豊作を祈る” 、そして3回目の笑いには “今年一年の辛い事を笑い飛ばす” といった意味を込めて皆で笑うのだそうです。
人は笑っている間は何も考える事が出来ません。一旦大声で笑い出してしまえば、後は只々笑い続けるより他はないのです。そして大口開けて笑うことによって身体の力みや心のモヤモヤを吹き飛ばし、スカッとした爽快感を得るのです。そう、地元の人々にとって、“実りある笑い” であったからこそ連綿と続けられてきた “笑い講” なのです」
「笑いの能力には、①健康 と ②仲間と仲良くできる の2つがあります。これは人類の進化の過程で自らが獲得した力といえます。
ここで①の 健康と笑い について考えてみましょう。まずはお手元にお配りした資料をご覧下さい。ここに記されている “NK細胞” とは免疫細胞のことで、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、抗アレルギー作用など、人体において生体防御機構の中心的役割を担っているのですが、この資料によれば笑う事によって多種多様の NK細胞 が活性化しているのが分かると思います。
同じくインターロイキン6と呼ばれる免疫系、血液系、炎症反応等の生体防御システムにおいて重要な役割を担う 生理活性物質 でありますが、こちらも 日本医科大学リューマチ科の吉野槙一教授 による実験で、笑いが引き金となって生体内反応の活性化が認められております」と、事前に参加者向けに配布した資料を用いて井上先生は説明を進めます。
「また “大笑いに対する神経内分泌系と免疫系の反応” の相関関係を記した資料も同時に添付しておりますが、こちらの実験結果は立ち会ったお医者様が得られた結果に驚いた、という逸話も残っております。
さらに “笑いと糖尿病患者の血糖値の関係” という村上和雄筑波大学名誉教授の資料では、B&B の漫才を聞いて頂いた上で血液検査を行ったのですが、こちらも具体的な数値で良好な結果が示されております。
以上、それぞれの多岐にわたる実験結果からもおわかりのように、笑う前と笑った後とでは、心身ともに大きな変化が認められるのです。さしずめ笑いとは、副作用のない薬であり、極端な話、身体の調子が悪いと 「笑いが足りないな」 と考えて飲むサプリメントといっても差し支えないと思うのです(笑)」
「次に②の 仲間と仲良くできる ですが、これは先の 関西大震災 の避難所のケースがわかりやすいと思います。あの強烈な震災後、避難所では大勢の人々が共同生活を強いられました。その際、お笑い芸人が各避難所を訪問し被災者のストレスを和らげたのです。私が聞いた話では、震災後、酒びたりの日々を送っていたおじさんが、芸人の笑いで心がほぐれ 「酒ばかり飲んでいる場合やない」 と再起に目覚めた、というものがあります。これなどは笑いによって心にゆとりができた証拠だといえるでしょう。
笑うと心にゆとりができ、雑念を吹き飛ばす。するとストレスが解消し、自己について距離をおいて見ることができる。同時に自分のことを笑えるようにもなり、結果、笑いが凝り固まった心を自由にしてくれる。そうなって初めて周りが見渡せるようになると思うのです。まずは自分の周囲を見ることができねば、仲間の事を思いやる事などできません」
「何かしんどい時や苦しい時などは、自分の気持ちを切り替えることはなかなか難いものです。でも大阪には 「不景気には寄席がはやる」 という言葉があります。不渡りなどを掴まされてしんどい時は寄席にでも飛び込んで笑って気分転換を図り、良いことを呼び込みなさい、ということだと私は思うのです」
「現代のようなグローバル社会では、笑顔の不思議な作用が地球レベルで広がるのはある意味必然だといえるでしょう。笑顔には 「戦わない」 「敵意を持っていない」 「歓迎しています」 「あなたに好意を持っています」 などの力がありますが、さらに笑顔の効用として 好感・好意、安心・安らぎ・怒りの制御、雰囲気を変える、関係の円滑・緩和・調整の機能などもあるので、人種を超えたコミュニケーションにはとても有効な手段となるのです」
「日頃から笑いやネタに敏感になっておく必要があります。周囲がドッと笑えば、その笑いを瞬時に分からなければなりません。相手があってこその笑いであり 「孤独は笑いの敵」 なのです。
大阪商人はお客と接する知恵に長けています。これこそ相手があってこその交渉事。そこに笑いが加わるのは当然のことなのです。よく大阪は “ヨコ型の社会” だと言われます。そうした社会には “タテ型社会” にみられるような指示系統などは存在せず、まずは円滑な人間関係がスタートで、その関係が成り立って初めて交渉事が始まるのです。
さらに大阪弁は 「口の文化」 であります。「洒落言葉」 を発達させ、ヨコ社会の中にある厳しい競争関係を生き抜いてきた歴史があります。緊張と緩和を伴い、最後は笑って仲良くできる。他人様あっての生活だからこそ 「笑い」 は必要とされ、生み出されてきたのです」
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「先程私は、「大阪弁は口の文化」 であるといいました。しかし残念ながら 人と人とのコミュニケーション は言葉だけでは完結致しません。一例を申し上げれば、顔の “表情筋” を動かすだけで脳に新たな刺激が生まれます。つまり、面白くなくても鏡を見てニッと笑えば、型が感情を引き出してくれるのです。大阪人は身振りも手振りも大袈裟です。ですが、実はこういった大きな動作こそが大切なのです。心が動くと身体も動く。すると心がもっと軽くなる。心と身体の相乗効果は計り知れないのです。ですから私はまず “笑いありき” で行動を始めるべきだと考えているのです」
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今回の講義を文字通り “笑顔” で進められた井上先生。最後には、次のようなことをおっしゃられました。 「大阪芸人はそこにいる人の話で盛り上がるが、東京芸人は目の前にいない人の話で盛り上がる、と知り合いの芸人に聞いたことがあります。大阪人は自分の失敗談を笑いのネタにできますが、東京人は自分が笑われると自分の権威までもが笑われたと感じ 「貴様、何を笑ったのか」 と怒り出す点に違いがあるのです。同じ笑いでも東と西では質が違うのですね。
元気に生きることと仲間と仲良く生きることは、人間が生きていく上での至上命題であります。笑いは人間の心に影響し、同時に身体にも影響を与えます。先ずは笑いによって心を元気にすることが大切であり、またそれが人生を健康に送る秘訣なのではないでしょうか」
ホロンPBIでは忙しい毎日の中では中々感じることの出来ないような「感動」や「体験」を皆様に味わっていただけるよう、各界のさまざまな先生のお話をホロンPBI主催の「上質人生大学公開講座」を中心に今後も充実したラインナップで展開してゆきたいと考えております。
気軽な雰囲気の中で本当に気持ちの良い「体験」や「知識」に触れ合うチャンスなんてそうそうあるものではないですよね。これを機会に好奇心一杯の気持ちを鞄に詰めて、会場まで足をお運び頂ければ幸いと存じます。
スタッフ一同、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
それでは次回のホロンPBI主催の「上質人生大学公開講座」を楽しみにしていて下さいね。楽しいこと、不思議なこと、そしてあなたの人生にちょっとしたエッセンスを加えることが出来ること請け合いです。 どうぞご期待下さい。







