上質人生大学

特別講座レポート

2005年11月その弐
武術とヨガにおける「呼吸法」について~密息法という呼吸法から~
成瀬 雅春 先生 : 河野 智聖 先生

 皆さん、こんにちは。今回のPBIバーチャルホロン大学公開講座レポートは、 武術とヨガにおける 「呼吸法」 について ~密息法という呼吸法から~ 」 の模様をお届けいたします。

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 人間の命を語る場合、絶対に外せない項目の1つ~ 「呼吸」 。呼吸があるからこそ人は命をつなげてゆけるのですが、あまりに当たり前な行為故、日常生活においてその重要性を意識することはほとんどないのが実情ではないでしょうか。
  しかし、我々生命の根底を担っているというその性格上、呼吸の良し悪しが心身に深く影響を与えてしまう事実は否定できません。ましてや身体能力や動作を極限まで突き詰めようとする武術やヨガといった分野においての呼吸の重要性は言わずもがなです。
 そこで、今回のPBIバーチャルホロン大学公開講座は、ヨガの大御所・成瀬雅春先生と武術家・河野智聖先生とのユニークな対談を通じて、呼吸の持つ重要性を再確認してみることに致しました。

 武術の中では、禅から伝承されたと言われる 「密息法」 という背骨で息を吸うという呼吸法などがあるそうですので、河野先生からは密息法を含めた武術的見地から、そして成瀬先生からはヨガ的見地から呼吸についての本質を探って頂きたいと思います。
  ヨガや武道では呼吸という最重要課題をどのように捉え体得しているのか、私達が呼吸を知り、学んだ後はどのようにして生活に応用すべきなのか、そして 「息の深い生活」 とはどんなものなのか、などについてじっくりとお話を伺いたいと思います。

happa.jpgi-naruse.jpg 【 成瀬 雅春 (なるせ まさはる) 先生 】 

  ヨーガ行者、ヨーガ指導者。12歳頃に「即身成仏」願望が生じ、今日までハタ・ヨーガを中心に独自の修行を続けている。1976年からヨーガ指導を始め、1977年2月の初渡印以来、インド、チベット、モンゴル、ブータンなどを数10回訪れている。 
  『サンデー毎日』(1983年5月1日号)のグラビアに「驚異の空中浮揚術」として8枚連続写真が掲載され一般に知られるようになった。さらに『週刊文春』(1988年4月21日号)に「空中大浮揚」として地上1メートルを超える写真が掲載された。空中浮揚以外にもシャクティチャーラニー・ムドラー(クンダリニー覚醒技法)や心臓の鼓動を止める呼吸法、ルンゴム(空中歩行)、系観瞑想法などを独学で体得している。 
  2001年、全インド密教協会からヨーギーラージ(ヨーガ行者の王)の称号を授与される。アーカーシャ・ギリ(虚空行者)という修行名で毎年標高4000mのヒマラヤで修行を続けている。 
  成瀬ヨーガグループ主宰。倍音声明協会会長。日本書経画協会理事長。朝日カルチャーセンター講師。

【 主要著書 】 
  『キレイをつくるらくちんヨーガ』 
  『50歳からはじめるらくちんヨーガ』 
  『オフィスでもできるらくちんヨーガ』 
  『からだのお悩み解決!らくちんヨーガ』 
  『仕事力をUPする!らくちんヨーガ』 
  『ふたりではじめるらくちんヨーガ』(以上、中央アート出版社) 
  『ハタ・ヨーガ』 
  『呼吸法の極意 ゆっくり吐くこと』 
  『クンダリニー・ヨーガ』(以上、BABジャパン) 
  『仕事力を10倍高めるヨーガトレーニング』 
  『仕事力を10倍高める呼吸法トレーニング』 
  『仕事力を10倍高める瞑想トレーニング』(以上、PHP研究所) 
  『5分でできるスッキリ瞑想法』(日本実業出版社)など他多数。 

【 主要ビデオ&DVD 】 
  『ハタ・ヨーガエクササイズ』 
  『ハタ・ヨーガアドバンス』 
  『ヨーガ呼吸法上巻・下巻』(以上、BABジャパン) 
  ビデオ『気持ち良くタバコがやめられる』(キュアー) など他多数。

 

i-kouno.jpg河野 智聖(こうの ちせい) 先 生】

 少年時代より武術を学び、 「身を整える」 「和する」 「歳と共に熟練する」 ことを目的に 「心道」を創始する。
  「動体学」 「快気法」 「ニコニコマッサージ」 「こころ整体」 など新しい体技を中心に東京・大阪・名古屋など活動している。

主要著書
 『健康になる整体武術』(筑摩書房) など


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 「宜しくお願いします」 成瀬先生と河野先生が、お互い、及び会場の皆様に挨拶をされました。

河野 : 「成瀬先生と最初にお会いしたのは、確か 「演舞(えんぶ)」 で舞いを舞ったときでしたね。 「一緒にやろう」 と声をかけていただきました。ある土曜の夜でしたか、先生の所に行ってダンス的な稽古をいそしんだまでは良かったのですが、結局、本番では先生が1人で踊られましたよね。
  これは練習時の私や私以外のメンバーのダンスを見て 「あぁ…、これは使い物にならないな(笑)」 と思われたからに違いないのだと思いますが…(笑)」

成瀬 : 「あぁ…(笑)、そんなこともありましたね。あの演舞会は数回行い、その後、バレリーナの方々とも一緒に踊ったりしたのですが、最近はそのような機会もグッと減ってしまいました」

河野 : 「先生は、何故舞いたいと思われたのですか?」

0511_taidan_02.jpg成瀬 : 「あの時は 「時空」 と 「軸」 を掛けたタイトルをつけたのですが、最近は 「舞い瞑想(MY瞑想) を心掛けています。基本は瞑想なんですよ。逆になってしまうと 「瞑想的な舞い」 になってしまうのですが、そうではなく、あくまでも 「舞う瞑想」 なんですね。

  舞うという行為には、瞑想を深め、自分自身の源から何かが動き始め、それをそのまま自分の身体にダイレクトにフィードバックし掴んだものによって自分自身が動き出す、といったプロセスが含まれています。
 このプロセス自体が、自分自身の本質を捕らえる作業だと私は思っています。大切なことは 「舞いを体験する」 ことではないでしょうか」

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 講義を始められた両先生は、早々にお二人の思い出話への花を咲かせます。そしてしばらくの間、談義が続き、一息つくと河野先生から成瀬先生に呼吸法についての質問が掛かりました。

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0511_taidan_03.jpg河野 : 「呼吸法にはどのぐらいの種類があるのでしょうか」

成瀬 : 「人によって色々な解釈があるでしょうが、私の場合、呼吸は方法だと考えています。例えば今ここは森であり、とても綺麗な空気と緑が存在したとします。さぁ、今からここでリラックスして大きく呼吸をしましょう…と呼びかけたとしても、私はこれを呼吸法だとは思いません。
  何故なら、これはイメージの話であり、テクニックではないからです。誤解を恐れずにいえば、呼吸法においてのイメージは、出来るだけ排除すべき対象だとさえ私は考えているのです。
 イメージというものは十人十色であり、ある1種類の呼吸法をマスターしようとした場合には、その不確実性がとても邪魔になってくるのです。私は1種類の呼吸法を10人の方々にマスターしてもらいたいと願っております。その為には、1種類の呼吸法を細かく規定した方がマスターする精度が高くなるのです。
 例えば吐き始めから吸い終わりまで口をどの程度開き、どのようなスピード行うのか。また、音を出すのか出さないのか、もし出すとすればどの程度の音を出しながら呼吸をするのか、などの規定を細かく決めて 「さぁ、この呼吸法を行いなさい」 とした方が正しい呼吸法に近づけますからね。それが本来の呼吸法であり、そうすることによって初めて何十種類もの呼吸法をマスターする事が出来るのだと私は思うのです」

河野 : 「なるほど。種類そのものよりも、いかに正しい呼吸法をマスターするか、ということの方が重要なのですね。
 実は今、私のところに稽古に来られている方々にまず指導していることは、胸やお腹を動かさずに呼吸をせよということなんです。これは相手と対面したときに、こちらの呼吸が分かってしまうと、相手に動きを読まれてしまうおそれがあるからです。具体的には背骨を使って呼吸をするという考え方に沿って鍛錬するのですが、自分の背骨を使い、出来るだけ長く息を吸いながら次いで洩らしてゆく。なかなか難しい方法ですが各自練習していただいております」

0511_taidan_04.jpg成瀬 : 「それは私が著書で書いている 内的完全呼吸法 とほぼ同じですね。これは外から見た場合、自身の身体がほとんど動かない呼吸法のひとつです。

  元々はヨガでいう 完全呼吸法 となるのですが、これは息を吐く際にお腹をしっかりと凹ませると同時に胸を狭め肩を下げるのです。そして息を吸うときは、お腹を膨らませて胸を広げ肩を上げるんですね。これは大きな動作を伴う呼吸法なのですが、私が呼吸の精度を上げるために更に改良を加えたのが、先程申し上げた 内的完全呼吸法 であります。
 この呼吸法では、最初に完全呼吸法の動作を身体にしっかりと覚え込ませた後、徐々に身体の動きを減らしてゆくのです。その際、内面の意識は減らさずにむしろ増やすのが特徴となります。ですから、最終的には動きをなくし意識だけで呼吸をする形となるのです。
 具体的には当初の息を吐く際のお腹を凹ます動きをなくしてゆくのですが、意識の中ではしっかりとお腹が凹んでいる。でも、実際にお腹を見ると動いてはいない。逆に息を吸うときも、実際には膨らんでいないのだけれど、意識の中ではしっかりと膨らんでいる。そういう状態を目指すのです。
  この状態を実現できれば、呼吸の長さは通常呼吸の倍以上の長さになります。それは身体に無駄な動きがない分、余計な力みもなくなり、結果としてゆっくりとした呼吸を行うことが出来るからなのです」

0511_taidan_05.jpg河野 : 「なるほど。私個人としては、その点についての理解を 息を通す ことだと解釈しております。

  今、先生がおっしゃった方法は 身体の力を抜く ということに他ならないと思うのですが、この方法は例えば、武道でいうところの 関節に溜まった力を抜く といった基本的な技といえるのではないでしょうか」

 と、おっしゃった河野先生は、突如会場の男性を壇上に上げると、その手首を取って次のように告げられました。

 「痛いことはしないので安心してくださいね(笑)。いいですか。このようにして相手の手を掴んだ包帯で手首、肘、肩といった所に息を通します。 (ここで、相手の手首を掴んだままフッと息を吹きかける) そして相手の手を動かすと、ほら、もうこのように関節がグニャグニャになってしまうのです」

 相手の男性は、自身の身体に起きたことに驚き、目を白黒させています。

 「このように息を通すだけで、ひとつの技になってしまうのです」

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成瀬 : 「呼吸って身体のどこを使って行っているかおわかりになりますか。例えば寝ている人を見て呼吸しているな、とわかる箇所は 横隔膜 ですよね。本当にぐっすりと寝ているときは横隔膜だけが綺麗に動き、他の箇所に力みが全然ない。あれはある意味、理想の呼吸といえるかもしれませんね」

0511_taidan_06.jpg 「もうひとつ、呼吸における重要な場所というのは 喉が開いているかどうか なんですね。この点は非常に重要でして、喉の開閉をまず自分で認識できていないと、自身の身体のコントロールが難しくなってくるのです。多くの場合、自分で気づかずに只単に喉が閉じている事が多いのですが、喉の状態で、身体の持つエネルギーの内外との関係が変わってくるんですね。

 例えば、忍者なんかが自らの気配を隠すときは喉を閉じて息を潜めます。喉の奥を閉じてお腹と喉の空気の通りをフラットにするのです。この場合はエネルギーも身体の内外を通じてフラットとなりますが、これはいわゆる 「呼吸を止めている状態」 とは違うんですね。呼吸を止めてしまうと、相手に 「息を殺しているな」 と伝わってしまいますからね。
  ですから呼吸を止めるのでなく、息の通りをフラットにする。これって、呼吸のテクニックとしては一流なんです。そういう意味では、呼吸というのは喉とお腹でコントロールしているといえるでしょうね」

河野 : 「喉の開閉といえば、歌手が喉を壊すっていうのがありますが…」

0511_taidan_07.jpg成瀬 : 「昔は歌うときは喉を大きく開けて歌う方が良い、といわれていましたが、この10年、20年の間に学説が変わってきまして、最近では歌や楽器の上手な人は喉が閉じてきているんですね。ヘタな人ほど喉が開いている。これは、上手い人の喉の開閉スピードが速くなってきているからに他ならないんです。

  喉を閉じているほうが潜在的な息のスピードは速い。ですから、一流であればあるほど、必要なとき以外に喉を閉じるコントロールも一流なんですね」

河野 : 「整体的観点からみて、呼吸観点 というものがあるのですが、それは腰の上に存在しています。わかりやすく体験していただくと、正座をして腰を後ろから押してみると、ほら、どうです。呼吸がしやすくなるでしょう。ここのコントロールを細かく行えば、普段の呼吸も随分しやすくなるんです。
 最近の若い人は、お尻を前にずらしたような座り方をする人が多いようですが、これは見た目のだらしなさだけでなく、腰も据わらず、呼吸も浅くなってしまう座り方なんですね。こういった日常生活に密着する姿勢は、その人の人生や生き方にも大きな影響を及ぼしますから、やはり私としては普段姿勢としての正座をお勧めしたいですね」

 「呼吸は姿勢と密接に関係しています。武術では身体を練り、鍛えることによってどういった状態でもバランスをとれるようになることを目指します。その安定性に寄与するのが呼吸であり、暑さ、寒さや危険な状態などの環境の変化を敏感に察知し、自身にフィードバックしてくれる大きな指針にもなってくれます。そういった意味では、瞑想も大変重要なポジションを占めてくるように思いますが…」

成瀬 : 「おっしゃる通りです。生まれてきてから死ぬまで、本当に自分がしなければならないことは 自分自身を知る ということですが、今の時代、自分以外のことは、例えばパソコンを使えば大概のことは調べがついてしまう。
  しかし、自分の本質に関わることは誰も教えてはくれません。だから、自分のことは自分で調べ、探っていくよりほか仕方がない。
 人間として生きていくと、自分自身の探求が最後に残された課題となって、いつか自分に降りかかってくる。そのときに大きな手立てとなるのが瞑想であり、瞑想をコントロールする手段として呼吸が存在するのです」

 この後、両先生による幾つかの呼吸法の実践、指導が行われ、会場内は新鮮な驚きと発見、そして笑いに包まれました。

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成瀬 : 河野 : 「それでは最後に質問を受け付けます。皆さん、何かございますでしょうか」

参加者  「気を流す、という表現をもう少し具体的にしていただけませんか」

成瀬 : 「なるほど。もう少し、人間的な言葉に訳して欲しい、という訳ですね(笑)」

河野 : 「本当は言葉で表現できる世界ではないのですが…(笑)。例えば、みんなで気が合う、気が合わない、などということがありますよね。そういった人間的なまとまりというような響き合いなどが参考になるかと思いますね。それが自分の中を通り、やがて相手にまで伝わってゆくと…」

成瀬 : 「(質問者の不思議そうな表情を見て) … 答えになっていないようですね(笑)」

河野 : 「身体の力を抜く、ということがヒントになると思います」

成瀬 : 「そうですね。エネルギーの通りが悪いというのは、そこに緊張があるからで、力みが抜けるとエネルギーが通ってゆきますね。言い方を変えれば、関節部分の力みによって阻害されやすい傾向を理解し、意識と身体の緊張を取り除くことによって、相手の心と身体にしっかりと伝わる人間の想い (イメージ)  といったところでしょうか」

happa.jpg0511_taidan_08.jpg河野 : 「最近思っていることに 自我をなくすところから個性が生きる というものがあります。自己主張とは自我を通すことに他なりませんが、それでは周囲との衝突を生み、自分の良いところを発揮する事ができません。  武術で相手に技をかけようとした場合もやはり同じで、技をかけたいという自我が伝われば相手はそれに反応し抵抗してくる。それよりも、相手の欲求を感じ理解した方が、逆に相手に簡単に技をかけることができる。その為には、自我を極力なくさないと相手の声を聞くことができないのです。つまり、自我をなくすといった域まで到達して初めて 相手と馬が (気が) 合う レベルになれると思うのです」

0511_taidan_09.jpg成瀬 : 「自我をなくす為には、自我を見つければいいのです。雑念の中にこそ自我があるので、それらも全てひっくるめた上で自我をなくす努力をすべきなのです。ですから、ピュアな自分といったモノには、最初からはなれません。そんな虫のいい話ではないのです(笑)。

  自我を見つけられれば、自我は自然と消えてゆきます。そのための瞑想であり、呼吸法であると肝に銘じて欲しいですね」

河野 : 「潜在意識の中にあるものを顕在意識に出すと、その問題は消えてゆきますからね」

成瀬 : 「なるほど。それは今回の講座を締めくくるに相応しい、とても有意義な結論ですね(笑)」

happa.jpg ホロンPBIでは忙しい毎日の中では中々感じることの出来ないような「感動」や「体験」を皆様に味わっていただけるよう、各界のさまざまな先生のお話をホロンPBI主催の「 上質人生大学公開講座 」を中心に今後も充実したラインナップで展開してゆきたいと考えております。

 気軽な雰囲気の中で本当に気持ちの良い「体験」や「知識」に触れ合うチャンスなんてそうそうあるものではないですよね。これを機会に好奇心一杯の気持ちを鞄に詰めて、会場まで足をお運び頂ければ幸いと存じます。

 スタッフ一同、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

 それでは次回のホロンPBI主催の「 上質人生大学公開講座 」を楽しみにしていて下さいね。楽しいこと、不思議なこと、そしてあなたの人生にちょっとしたエッセンスを加えることが出来ること請け合いです。 どうぞご期待下さい。


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