2005年6月
倍音声明~OVER TONE CHANTING~
成瀬 雅春 先生
みなさん、こんにちわ。今回の PBI 上質人生大学公開講座レポートは「倍音声明 」の模様をお届けいたします。
皆さんは 「倍音声明」 というものをご存知ですか? 倍音声明とは、神秘のベールに包まれたチベット密教に伝わる数々の修行法から編み出された発声法で、発祥の地、本場チベットはもとより、日本における体験者からも「宗教的概念を必要とせず、また従来の健康法・瞑想法のレベルを超える素晴らしい体験が得られた」との声も上がる素晴らしい瞑想法の一つであります。
さて、 PBIバーチャルホロン大学公開講座の大好評シリーズとして6年以上前から展開している倍音声明ですが、今回の御指導も、おなじみ 成瀬 雅春 先生 にお願い致しました。
成瀬先生はヨガ行者として毎年海抜 4000メートルのヒマーラヤで修行を重ねられ、その長年にわたる修行体験をもとに数々の本を出版されるなど倍音声明の第一人者として活躍されている、この分野ではとても有名な方です。
倍音声明そのものは、母音の発声と沈黙の状態を順番通りに繰り返す …といった単純なものです。しかし、この単純極まりない行為に人間の意識を開放させる力が潜んでいるのですから私たちの心とは本当に不思議なものですね。
成瀬先生の言葉をお借りすれば 「この発声法には、ヨガ修行者達が一生涯をかけて追い求める「理想の世界」を具現化する力があり、その力には特別な修行などとは縁遠い方々にも「自身の心の内面を深く、簡単に見つめ直すことのできるパワーがある」 のだそうです。
「成瀬先生は、なぜ倍音をお続けになっているのですか」
今回倍音声明を行うにあたり、参加者の方からまずはご質問がありました。
「それは瞑想が人間にとってとても大切なものだからです。瞑想はバイブレーションそのものですが、長時間維持することは大変難しい。そこで、その問題点を解消するひとつの方法が倍音声明なのです。声を出し続けることで身体の中にバイブレーションが生まれ、内面において色々な音や感覚の体験が出来る。それは、ただ座っているだけでの瞑想では体験し難いものなのです。
ですから私は倍音声明をお勧めし、実践もしているのです。もっとも倍音声明は、音(声)がかなり響き渡りますので、初めての方は少し驚くかもしれませんね」
笑顔で述べられた成瀬先生の返答に参加者も納得の表情です。
「さて、手元にお配りした紙(発声の順番を明記)を頼りに声を出してみて下さい。倍音声明中は身体の中で常に振動(バイブレーション)が起きますが、他人の振動によっても様々なイメージが湧いてきます。聞こえる様々な音を楽しんで下さい。普通の瞑想では体験できない肉体的、精神的感覚を素直に受け取り楽しんで下さい」と参加者に話される成瀬先生。
「では早速、はじめましょうか。とにかく体験して頂きますので、まず皆さんで輪になって下さい」と呼びかけると参加者全員で一つの大きな輪をつくらせ、成瀬先生が手に持つ小さな鐘の音に合わせて母音を発するように告げました。
「カーン…」
鐘の合図と共に、会場全体に震える声が響きわたります。皆の発する「声の波」に会場が満たされてゆく中、発音が2~3回変わるとどうでしょう。最初はバラバラだった声が絶妙なシンクロへと変化し、さらに奥深い感動が会場全体を包み始めました。
そのまま十数分、同じ発音を続けると次のステップとして無音を加えた6母音を、隣なりの方と違う発音になるように成瀬先生が各自の発声順番を決めました。
1回の発声平均時間は1分30秒前後。こうしてそれぞれが違う母音を順番に発声することにより、会場全体を包む「音」がより複雑となり、さらに深い瞑想状態に入ってゆけるように導きます。不慣れから来る「不揃いな音」も、発音を2~3回変えた頃には先程同様、複雑で大きなうねりへと変わってゆきました。
そして30分ほど発声を行ったところで、成瀬先生は約20分間の休憩を挟まれました。休憩の後にはいよいよ今回の「クライマックス」が待っているのです。
「先生、倍音声明の時間ってあっという間に過ぎてしまうのですね。私達は、ひとつの音を何分くらい行っていたのですか」
「ハイ、そうですね…あなたは何分くらい行っていたと思われますか(笑)」
「5分から10分くらいでしょうか…」
「人によって時間の長さは違うものなのです。詳しくいうと 「その人が瞑想中に感じる時間の長さは、他の人とは違う」のですよ。ですから、あなたが5分と感じればそれは5分で正しいのです」
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休憩も終わり、いよいよ「隣と違う母音の発声」を長時間にわたって行うクライマックスが訪れました。「倍音声明」を傍で聞いていると「放出された声のエネルギーが空間の歪に消え去る流れ」が手に取るように分かります(その感覚に根拠はないとしても、実にリアルに感じられるのです)。しかし、一旦倍音声明の輪の中に入ってしまうと、声のエネルギーなどと冷静に感じていられるのは最初だけで、やがてその音のバイブレーションそのものに巻き込まれてしまうのです。 その他にも、この場と無関係な音(賛美歌とは違う、恐らく自身の記憶に刻まれているような音)も聞こえて来るのですが、フト冷静になってみれば会場全体を包み込むものは「参加者全員の声」しかないのが何とも不思議でなりません。
成瀬先生は合図の鐘を鳴らす以外何も行いません。只ひたすら合図を出し続けます。結果、順番としての無音時以外、参加者は休みなく声を出し続ける事になります。
会場を包み込む複雑な波動の中、脳裏に浮かんでは消える無心と雑念。内面に次々と沸き起こる自らの感情を味わいながら、ひたすらに声を出し続けますが、皆さんの発声パワーに時間経過による衰えやバテは見受けられません!
皆が声を出し続けて小一時間、程好く「倍音声明」は終了の鐘を迎える事となりました。
数分間の静けさを経て、心地よい疲労の中再度、成瀬先生の話に耳を傾けます。
ここで成瀬先生は参加者の皆さんと向き合うように座り、質問を受ける時間を設けられました。それに応えて「倍音声明」を体験した直後の皆さんからは、自身の感想を交えた「熱い気持ち」が成瀬先生に投げかけられます。
「倍音声明中に金属音が聞こえました」。また他の参加者からは「ハミング時に身体の中で音が共鳴しました」との声が寄せられました。
「耳では聞き取れない周波数の音でも、身体は感じ取ってしまいます。その感覚が元となって色々な現象を私達の内面に呼び起こしてくれるからこそ、そのような感じ方になるのだと思います」
「倍音声明は、今回のように複数で行うべきでしょうか」
「いいえ、一人でも十分に行えます。ただ、静かな場所で行うよりも音が響いているところで行う方がより深く倍音声明の良さを味わう事が出来ます。ちなみにチベット密教では滝の傍で行う事が多いのですが、その際の人数にはあまりこだわりません。さしずめ日本では、高速道路の下で行うイメージでしょうか」
「私は今までに何回も参加させて頂いていますが、身体の調子によるのでしょうか、今回はあまり気分が良くなりませんでした…」
「チベット密教では内面に抱えているものをカルマと呼んでいますが、そのカルマが浄化する過程においてはそのような感覚を味わう事があります。おそらく今回はあなたの内面に、何か出さねばならないものがあったのではないでしょうか」
すると、別の参加者からは「私は最初の方で頭痛がしていたのですが、倍音声明を行っていくうちにどんどん良くなっていきました」との声も聞かれました。すると成瀬先生は「倍音声明を行うと最後はサッパリとした気持ちになる方が多いのです。それはまるで、お風呂に入った後のようなすがすがしさと言えるでしょうね(笑)」
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ここで、PBIバーチャルホロン大学公開講座を主催する 金蔵院先生 より発言がありました。 「あの阪神大震災の前に神戸の造り酒屋の蔵で行った倍音声明の音の響きは素晴らしく、今でも強く印象に残っております。残念ながら震災によって江戸時代以前より残されてきた貴重な建物がなくなってしまった今ではその響きを再現する事叶いませんが、私どもではこれからもよりよい場所を探してゆきたいと考えておりますので、皆さん、どうぞ宜しくお願い致します」
そして、最後に会場を見回した成瀬先生は参加者の皆さんにこう語りかけました。
「身体をコントロールする能力があれば生きてゆく上で何が起き、見えようが問題はありません。なぜなら自分にとって一番必要な対処法を、一番自然な形でとれるようになるからです。その為には自身の意識を、どれだけ身体に向けられるかがとても大切になります。
その意味でも倍音声明はとても手軽に、且つ深く行える瞑想方法だと思います。倍音声明とは最終的には音が見えるようになる作業ですが、その感覚を言葉で説明する事は出来ません。
私は倍音声明を、数え切れない程体験し、実践しております。しかし今までに一度たりとも同じ経験をしたという事がありません。その時々の体調や自分自身の精神状態、そして「倍音声明」を行う会場の違いによって響きが全く違ってくるのです。もちろんこれは体験によってしかご理解頂けない領域だと思います。
倍音声明、そして普段の生活に関わらず人間は常に自分に必要な音をピックアップしていますが、それは音に浄化作用があるからだと言われております。只単に音を発し音を浴びる…この単純且つ奥深い体験をこれからも皆さんと一緒に続けて行く事が出来れば、それは私としても大きな喜びなのです」と。
会う人にやさしさと厳しさ、さらに気さくさをも感じさせるのは、常に厳しい修行を行われてきた成瀬先生ならではの魅力です。
冒頭でも申し上げた通り「倍音声明」はシリーズとして展開しております。次回の倍音声明へは、このレポートをお読みの皆さんも "普段の生活では感じる事の出来ない「気持ち良い瞑想状態」"にぜひ御参加されてみてはいかがでしょうか。
気軽な雰囲気の中で本当に気持ちの良い「体験」や「知識」に触れ合うチャンスなんてそうそうあるものではないですよね。これを機会に好奇心一杯の気持ちを鞄に詰めて、会場まで足をお運び頂ければ幸いと存じます。
スタッフ一同、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
それでは次回のホロンPBI主催の「 上質人生大学公開講座 」を楽しみにしていて下さいね。楽しいこと、不思議なこと、そしてあなたの人生にちょっとしたエッセンスを加えることが出来ること請け合いです。 どうぞご期待下さい。







