2003年3月その壱
倍音声明
成瀬 雅春 先生
皆さん、こんにちわ。今回のPBIバーチャルホロン大学公開講座レポートは、3月22日(土曜日)に行われた「倍音声明」の模様をお届けいたします。 ところで皆さんは「倍音声明」というものをご存知ですか?
「倍音声明」とは、神秘のベールに包まれたチベット密教に伝わる数々の修行法から編み出された発声法で、発祥の地、本場チベットはもとより、日本における体験者からも「宗教的概念から脱し、従来の健康法・瞑想法のレベルを超えている!」と、言わしめた素晴らしい瞑想法の一つなのです。
「倍音声明」…「すでに知っている」「体験した」あなたから、「なに、それ?」のお隣りさんまで、さぁ!普段の生活では体験し得ない素晴らしい瞑想の世界へ出発致しましょう!
さて、PBIバーチャルホロン大学公開講座の大好評シリーズとして三年前より展開している「倍音声明」ですが、今回の御指導も、おなじみ「成瀬 雅春」先生にお願いすることが出来ました。
成瀬先生はヨガ行者として毎年海抜4000メートルのヒマーラヤで修行を重ね、その長年にわたる行体験をもとに数々の本を御出版され、倍音声明の第一人者として御活躍されている、この分野ではとても有名な方です。
それではまず、本題に入る前に「倍音声明」とはいったいどういったものなのか、といった事を皆さんに簡単に御説明することに致しましょう。
一言でいうと、「倍音声明」とは「ウ→オ→ア→エ→イ→沈黙」という母音の発声と沈黙の状態を順番通りに行い繰り返す…といった単純なものです。しかし、この単純極まりない行為に人間の意識を大きく開放させる力が潜んでいようとは、未体験の方には、ちょっと想像出来ないかもしれませんね。
成瀬先生の言葉をお借りすれば「この発声法には、ヨガ修行者達が一生涯をかけて追い求める「理想の世界」を具現化する力があり、その力には特別な修行などとは縁遠い私達にも「自身の心の内面を深く、簡単に見つめ直すことのできるパワーがある」のだそうです。
小雨混じりの空模様の下、大阪は西九条の一角にある「ミューラシア」という会場で今回の「倍音声明」は始められました。 今回で7回目(うち一回は成瀬先生の講演のみ)ということもあり、会場にお集まりになった皆さんもどこかリラックスした雰囲気です。成瀬先生も見覚えのある何人かの参加者の顔を見ながら、ゆっくりと「倍音声明」について話し始めました。
「人が自分の人生を生きていく上で、瞑想の果たす役割はとても重要です。しかし短時間の瞑想ならともかく、長時間にわたって瞑想を行う事は私の経験からしても、とても大変な作業です。ところが「倍音声明」なら、長時間の瞑想と同じ結果を比較的簡単に得る事が出来るのです。
私も「倍音声明」と出会い随分年月が経ちましたが、月日が増せば増す程に本当に良いものだ、という実感が湧いてきます。ですから皆さんにも「倍音声明」の素晴らしさをぜひ体験して頂きたい、と心から願っているのです。」
「では早速、倍音声明をはじめましょうか」
笑顔で話し掛ける成瀬先生は参加者の皆さんに「とにかく体験していただきましょう。まず皆さんで輪になって下さい。」と呼びかけ、参加者全員に一つの大きな輪をつくらせました。
次に成瀬先生は手に持った小さな「鐘」の音にあわせて順番通りに母音を発声するように参加者全員に告げました。
「カーン…」
鐘の合図と共に、会場に参加者全員の震える声が響きわたります。皆の発する「声の波」に会場が満たされてゆく中、成瀬先生の合図のもと、発声する母音が2~3回変わるとどうでしょう。最初はバラバラだった声が、慣れてくるに従って微妙かつ絶妙なシンクロに変わり、さらに奥深い感動が会場全体を包み始めました。
そのまま十数分、同じ発声での倍音声明を続けた後、次のステップとして成瀬先生は、全員が一度に「同じ母音」を発声するのではなく、無音を加えた6母音を、隣なりの方と違う発音になるように各自の発声の順番を決めてゆきました。
1回の発声平均時間は1分30秒前後。こうしてそれぞれが違う母音を順番に発声することにより、会場全体を包む「音の波」がより複雑となり、参加者全員がさらに深い瞑想状態へと入ってゆけるようになるのです。不慣れから来る「不揃いな音の波」も、発声音を3回程変えた頃には、先程同様、徐々に複雑で大きなうねりへと変わってゆきました。
そしてそれらを20分ほど行ったところで、成瀬先生は10分間の休憩をはさみました。休憩の後にはいよいよ今回の「倍音声明・クライマックス」が待っているのです。
「倍音声明」のクライマックス。
それは先程練習した「隣なりの方と違う母音を順番に発声する」方法を長時間にわたって行う、といったものです。
成瀬先生の指導の元、会場の皆さんが行う「倍音声明」を傍で聞いていると「放出された声のエネルギーが、いかにして立ち登り、波動の密度差によって発生する穴状の空間に飛び込んだ末、消え去ってゆくのか…といった、まるで命の営みを思わせる想念の流れ」が、手に取るようにわかるのです(それがたとえ根拠のない事だとしても、とてもリアルに感じます)
その他にも、金属の細胞が泣き唸るような音(今回の会場は下町の工場地区内の立地でしたが、ほとんどの工場はシャッターを降ろしていました)や、ここには関係のない種類の音(恐らく、自分自身の記憶に刻まれているような音)までが不思議と聞こえてきます。
会場全体が、一時も休むことなく、参加者全員の大きな声で満たされ続けているというのに!
成瀬先生は「倍音声明」を行なっている間、合図の鐘を鳴らす事以外何もおっしゃいません。ただひたすら参加者の皆さんへ「倍音声明」を続けるように、鐘による合図を出すだけです。その結果、順番としての無音時以外、参加者の方々は休みなく声を出し続けていることになります。
会場を包み込む複雑な声の波動の中で、脳裏に思い浮かんでは消え去る無心と雑念。
参加者の方々は、内面に次々と沸き起こる自らの感情を味わいながら、ひたすら声を出し続けていきます。しかも(たとえ6音中一回の割合で発声しない「無音のパート」があるにせよ)皆さんの発声パワーが衰え、バテる、といった事はありません!その間、時間にして1時間(!)。
皆が声を出し続けた果てに、程好く「倍音声明」は終了の鐘を迎えました。
数分の静けさの後、心地よい軽い疲労感を感じながら再度、成瀬先生の話に耳を傾けます。
そこで成瀬先生は参加者の皆さんと向き合うように席を変え、質問を受ける時間を設けられました。それに応えて「倍音声明」を体験した直後の皆さんからは、自身の感想を交えた「熱い」質問が成瀬先生に投げかけられました。
「発声時と一転し、終わった時の静寂がとても素晴らしいですね!ところで、倍音声明の最中にイメージ力があがって来るような気がして(多数の方がうなずく)見えないものまで見えてしまうような感じを受けました。このような事に対してはどう思われますか?」
「人によって受ける感じが違いますが、倍音声明後は、おおむね風呂上りのようなサッパリ感が味わえますね(笑)。私もイメージ力が広がるような感じを何度も体験しております。これこそ誰にでもできる瞑想法…「倍音声明」の真骨頂と言えるのではないでしょうか」
「今回の会場はとてもいい雰囲気だと思うのですが、成瀬先生はどのように思われましたか?」
「今回は会場内に立つ4本の松柱の中に円を作ってみましたが、これはチベット寺院内で倍音声明を行ったときの雰囲気に近いですね。この会場は、なかなか素晴らしいと思いますよ」
「倍音声明中に動き出したくなる衝動に駆られたのですが、このような時はどのように対処すればいいのでしょうか?」
「隣の人を蹴飛ばさなければOKです(笑)倍音声明中の身体は楽器なので(会場うなずく)より声を出しやすい体勢を欲するが故に、身体を動かしたくなる欲求が湧き出てきます。そのような時は、我慢せずに自由に動いてみてください」等など…。
中には、「知人で、左ひざに痛みを抱えている方がいるのですが、そのような方にも倍音声明を勧めてもよいのでしょうか?」とご質問された方がいらっしゃいました。
その問いに成瀬先生は「いいと思いますよ。倍音声明で声を出していくうちに、身体が整ってきますので、その結果として、左ひざが良くなる可能性も出てくると思います」とお答えになりました。
すると参加者の一人が「以前の倍音声明で、右腰がしびれて何年も正座の出来なかった方が参加され、2時間ほどの倍音声明を行った結果、その場で正座が出来るようになったことがありましたよ!」と貴重な体験談を披露してくださる一幕もありました。
最後に成瀬先生は参加者の皆さんにこう語りかけました。
「私は倍音声明を、数え切れない程体験し、実践しております。しかし今までに一度たりとも同じ経験をしたという事がありません。その時々の体調や自分自身の精神状態、そして「倍音声明」を行う会場の違いによって全く違う響きを毎回体験しております。この奥深く素晴らしい体験を、これからも皆さんと一緒に続けていきたいですね」と。
なんとも表現のしようのない非日常的な体験と不思議な感覚…。「倍音声明」は、誰にでも出来る簡単な発声法でありながら、重ねた回数毎に全く違う感覚を味合わせてくれる、極めて質の高い瞑想法なのです。
やさしさと厳しさ、そして意外なくらいの気さくさをお持ちの成瀬先生。
「倍音声明」はシリーズとして展開しておりますので、次回行われる節には、このレポートをお読みの皆さんも "普段の生活では感じる事の出来ない「瞑想状態」"を味わってみてはいかがでしょうか。気軽な雰囲気の中で本当に気持ちの良い「体験」や「知識」に触れ合うチャンスなんてそうそうはありませんよ(笑)。
それでは次回のホロンPBI主催の「バーチャルホロン大学公開講座」を楽しみにしていて下さいね。楽しいこと、不思議なこと、そしてあなたの人生にちょっとしたエッセンスを加えることが出来ること請け合いです。ご期待下さい。







